メールマーケティングは、メール配信により顧客にアプローチを図り、お問い合わせや資料請求、商品購入などのコンバージョン獲得を狙うマーケティング施策です。
「今時メールを利用している人は少ないのでは」と感じられるかもしれません。しかし、総務省情報通信政策研究所が公表した「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2022年最新)によると、10代と20代以外の全世代において、平日のコミュニケーション系メディアとして、もっとも頻繁に活用されているのは、メールであることが判明しています。
実は、チャット・メッセージアプリなどが普及した現在でも、メールは多くの人々に親しまれているツールであり、ユーザーが多い分、事業見込みのあるチャネルなのです。
当記事では、基礎知識から成果を上げるコツまで、メールマーケティングに関して詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
メールマーケティングとは
メールマーケティングは、メールを活用して情報を配信することにより、顧客との信頼関係を深めたり、購買意欲を高めたりするマーケティング施策です。近年、コストパフォーマンスの高いリードナーチャリングとして注目を集めています。
「メールで顧客に情報配信をする」と聞くと、ECサイトなどのBtoCビジネスを想像されるのではないでしょうか。実はメールマーケティングの効果は、BtoCビジネスに限りません。BtoBビジネスでも効果があるため、多くのBtoB企業でも活用されています。
例えば、取引先などで名刺交換をした人や、自社サイト経由での資料請求を行ってくれた見込み客、既に取引のある顧客に対してメールを介してアプローチを図ります。
メールの配信コンテンツについては、以下の通りです。
- 顧客に役立つ情報
- 新製品・キャンペーン告知
- ニュースリリース
- 製品・商品・サービスの宣伝メール
こういった情報を定期的に配信することにより、顧客の「態度変容」を起こし、最終目標である、資料請求や製品・商品購入などの行動を顧客に促すのが、メールマーケティングという手法なのです。
メールマーケティングとメルマガの違い
「メールマーケティングは、要するにメルマガのことでしょ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。確かに「メルマガ」がメールマーケティングと同列に扱われることもありますが、実はこれらは別物です。メールマーケティングはメールを活用した施策の総称を指す一方で、メルマガはメールマーケティングの手法の一つとなります。
メールマーケティングを行う3つのメリット
ここからは、メールマーケティングの実施によって期待できる3つのメリットについて見ていきましょう。
⒈ROI(投資対効果)が高い
デジタルマーケティング領域の調査会社であるUpland Adestra社が2019年に公表した「2019 Email Marketing Industry Census」では、数あるマーケティング施策の中でも、メールマーケティングはROI(投資対効果)の高い手法であることが判明しています。
同調査では、調査に参加した企業260社に対して「各マーケティング施策のROIをどのように評価しますか」との質問がされました。
その結果、メールマーケティングに「Excellent」と最上級の評価を付けた企業の割合は29%であり、9つのマーケティング施策の中で同評価の割合が最高値でした。もっとも同評価の低かったディスプレイ広告(5%)と比べると、その数値は約6倍です。
また、IT企業Litmus社による2020年の国際調査では、わずか1ドルの出費に対して平均で42ドルのリターンが得られることも判明しています。
メールマーケティングのROIが高いのは、導入・運用コストが低いためです。多くの場合、メール配信ツールを活用することになりますが、導入費用の相場は数万円程度、運用費用(配信費用)の相場は1通あたり数円程度となっており、他のマーケティング施策に比べてあまりコストがかかりません。
こうした理由により、メールマーケティングはROIが高く、投資した費用以上の成果が得られる見込みの高いマーケティング施策となっているのです。
⒉業務の効率化ができる
メール配信を行う上では、メール配信ツールを活用するのが一般的です。メール配信ツールでは、ツールが数百、数千人規模の顧客に対して営業の代わりに追客やフォローを行ってくれます。時間指定配信や一斉配信、顧客全体の中の特定の顧客層に絞った配信など、用途に合わせて様々な活用ができ、たとえ営業がいなくとも効果的・効率的なアプローチが可能です。
前述の通り、ツールにより追客やフォローを実施するため、営業が見込み客や既存顧客一人ひとりに電話をかけたり、訪問したりする手間を減らせます。これにより、業務の効率化を実現できるのです。
⒊エンゲージメントを高められる
メールマーケティングを活用すれば、企業と顧客の信頼関係を示す「エンゲージメント」と呼ばれる指標を高められます。
エンゲージメントは、顧客のファン化、リピーター化と密接な関係があり、より多くのコンバージョンを獲得する上で欠かせない重要な指標です。
顧客の状態や状況に合わせたメール配信により、エンゲージメントを高めます。
例えば、自社へ十分に信頼を寄せていない見込み客には、相手の問題を解決するお役立ち情報の配信を行い、既存顧客に対しては、商品やサービスの利用上の疑問にQ&A形式で答えたり、より効果的に活用するための助言などを行ったりします。
このようにして、顧客が潜在的・顕在的に求める情報を発信すれば、「自社の利益だけでなく、顧客の利益も意識してくれる信頼できる会社」と態度を変容してもらえるようになるのです。
メールマーケティングを行うデメリット
メールマーケティングにはデメリットもあります。メール配信ツールの活用により、ある程度の自動化が可能ですが、負担が全くなくなるわけではありません。ツールの取り扱いに慣れたり、効果的な運用をしたりするためには、ある程度の時間と労力を費やす必要があります。
多くの場合、自社が既に所有している配信リスト(顧客のメールアドレス)を流用し配信を行いますが、配信リストを全く有していない状態から始める場合もあるかもしれません。その際には、配信リストを集めるための時間的・金銭的コストが少なからず生じます。
メールマーケティングの種類
メールマーケティングには以下5つの手法があります。
- メールマガジン
- ターゲティングメール(セグメントメール)
- リターゲティングメール
- ステップメール
- 休眠発掘メール
それぞれには異なった特徴があるため、効果を最大化するためには使い分けをしていきましょう。
ステップメール
ステップメールとは、会員登録や購入などの行動をしてくれた顧客に対して、準備したメールをスケジュールに沿って段階的に自動配信する手法です。見込み客が会員登録をしてくれた場合を例に、配信フローについて見てみましょう。
- 見込み客が自社サイト経由で会員登録をしたことを契機に、会員登録に対する感謝のメール「ウェルカムメール(1通目)」を即日に配信
- 1通目の配信から3~5日後に、自社製品の紹介メールの(2通目)の配信
- 2通目の配信から1週間後に、キャンペーンの紹介メール(3通目)を配信
このようにして、メールを一定間隔で段階的に配信することによって、見込み客との関係性を徐々に深めていくのがステップメールの特徴です。
ターゲティングメール(セグメントメール)
ターゲティングメール(セグメントメール)とは、顧客の属性ごとにメールの配信コンテンツを分ける手法を指します。見込み客にも既存顧客にも有用です。
例えば「男性限定!リモートワークで働く男性の体調管理術セミナー」といったセミナーを都内で開催するとしましょう。この際には東京以外の顧客や女性顧客を省き、都内在住の男性顧客にのみメールを配信します。
全員に送る一斉配信に比べて配信する母数が絞られますが、その分、顧客の状態や趣味趣向に合わせたコンテンツを配信でき、開封率やクリック率、コンバージョンの増加が期待できます。
休眠発掘メール
休眠発掘メールは、過去にお問い合わせや購入があったのにもかかわらず、長期間アクティブでない既存顧客にアプローチする手法です。
休眠状態にある既存顧客は非常に関心が低い状態であるため、教育メールや販促メールでは反応してもらえません。したがって、休眠状態にある既存顧客には、以下のようなメールを配信し、購買意欲を刺激するのです。
- 相手の近況を尋ねるメール
- 無料キャンペーンの告知
- 期間限定・数量限定キャンペーンの告知
メールマガジン(メルマガ)
属性ごとにコンテンツを分けるターゲティングメールに対して、メールマガジンでは、顧客全体に一斉配信するメールを指します。なお、数あるメールマーケティング施策のうちの一つがメールマガジンです。
リターゲティングメール
リターゲティングメールは、見込み客の行動に基づいてメールを配信する手法です。例えば次のようなコンテンツが挙げられます。
- 商品ページを見た見込み客にメールでクーポンを送る
- カートから商品を放棄した見込み客にメールでリマインドする
- お気に入り登録された商品についてメールでリマインドする
リターゲティングメールにより、1度自社に興味を持ってくれたものの一時的に購買意欲が下がってしまった見込み客に対し、再度購買の動機付けができます。
メールマーケティングに必要なツール
メールマーケティングの効果を最大化する上ではメール配信ツールの利用が必要となってきます。メール配信ツールには、「メール配信システム」と「MAツール」の2種類があります。これらについて見て行きましょう。
メール配信システム
メール配信システムは、顧客にメールを自動配信してくれるシステムです。宛先指定やメールコンテンツの変更などを一括で行え、指定した日時に顧客に一斉配信が可能です。また、メールを配信する上で顧客を属性ごとに分類できたり、開封率やクリック率といった指標によりメールを受け取った顧客のレスポンスを可視化できたりします。
MAツール
MAツールは、マーケティング活動の自動化に幅広く使われているツールです。一つのツールを通して、見込み客の管理や各顧客の検討度合いのスコアリング、Webサイト制作など、企業のマーケティング活動を全面的にバックアップする多機能なツールです。メール配信に特化したメール配信システムとは異なり、さまざまなマーケティング支援機能の中の一つとしてメール配信サービスが提供されています。
メール配信ツールに必要な3つの機能
ここからは、メール配信ツールに必要となってくる3つの機能を見ていきましょう。
⒈グルーピング機能
グルーピング機能は、自社が所有している顧客データを元に、条件やステータスごとに顧客を分類する機能です。この機能を通して、ターゲティングメール(セグメントメール)の実施が可能です。グルーピングの例としては、次のようなものが挙げられます。
- 20代の女性
- 広島県在住の30代OL
- 自社製品を一度でも購入した経験のあるユーザー
- 釣り好きのユーザー
⒉測定機能
測定機能を用いて、以下の指標を測定可能です。
- 開封率
- クリック率
- オプトアウト(購読解除)率
- コンバージョン率
- 不達率
メールマーケティングで成果を出す上では、これらの指標を元にPDCAを回していくことが大切であるため、測定機能が十分に備わっているツールを選定しましょう。
⒊HTMLメール作成機能
HTML形式のメールはビジュアル表現に富んでいるため、顧客のレスポンスを上げられます。グローバル企業のGetResponse社が、2019年7月から2020年6月までの期間に配信された世界中のメール、55億通について調査を行いました。その調査結果によると、ビジュアルを含んだメールとテキストのみのメールとでは、開封率、計測率に以下の違いが出ることが判明しています。
開封率 | クリック率 | 登録解除率 | |
グラフィックあり | 21.44% | 2.68% | 0.12% |
グラフィックなし | 15.02% | 1.56% | 0.12% |
出典:GetResponse |
メールマーケティングの成果を上げるための3つのコツ
メールマーケティングの成果を上げるためのコツを3つご紹介します。
⒈メール配信の目的を明確にする
メール配信の目的を明確化しましょう。代表的な目的としては以下のものが考えられます。
- 製品・商品・サービスの認知度向上
- 購買意欲の向上
- 製品・商品・サービスの購入・契約数の向上
- 顧客のフォロー
- 顧客のファン化
闇雲にメール配信を行う前に自社の運用目的を明確にし、ピンポイントで施策を講じていけば、労力や費用を抑えた状態で自社が望む成果を得られやすくなります。
⒉メール配信の対象を明確にする
ペルソナもしくはターゲットを設定し、「誰に」「どのような価値を提供するのか」を明確にしましょう。
蓄積されてある自社データを活用したり、顧客アンケートを実施したりすれば、ペルソナとターゲットの設計が可能です。
先ほど紹介したGetResponse社の調査では、パーソナライズされたメール配信により、開封率・クリック率が次のように変化することも判明しています。
開封率 | クリック率 | |
パーソナライズされたもの | 21.75% | 2.48% |
パーソナライズされていないもの | 18.75% | 2.33% |
出典:GetResponse |
⒊KPI・KGIを設定し、PDCAを回す
目的を達成するためには、達成したい目的を定量的に評価しましょう。その際に役立つのが、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)とKGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)です。
メールマーケティングの指標となるKPI・KGIおよび、それぞれの成果の目安となる値は以下の通りです。
KPI | KGI |
開封率:15% | コンバージョン率:クリック数の2.96% |
クリック率:1.85% | 売上:自社次第 |
オプトアウト(購読解除)率:0.08% | |
不達率:10% | |
出典:GetResponse |
上記の表の数値を元に、最終的な自社目標を達成するためには、それぞれの指標がどのくらいの値に達する必要があるのかを算出しましょう。
そして、KPI・KGIの目標値に達せなかった場合は、どのような内容にすれば開封率やクリック率が上がるのかを考案し、検証し続けましょう。メールマーケティングにおいても、他のマーケティング施策と同様にPDCAを回していくことが大切となります。
おすすめのメール配信ツール3選
ブラストメール

ブラストメールは、メール配信システムの提供を始めてから20年間の歴史を持つサービスであり、9年連続で顧客導入数1位を獲得した人気サービスです。契約社数は12,000以上であり、全国の様々な企業から官公庁まで、幅広く支持を得ています。
HTML作成の簡便性に力を入れており、HTMLエディタの専門知識がない方でも、手軽にサクサクと運用が可能です。メール配信技術も優れており、配信先の携帯電話会社およびプロバイダーの規制などを上手に回避できるようになっています。これにより、1時間に送信できるメール数は、280万通/時を誇ります。
特徴
- 顧客導入数シェアNo.1
- シンプルで運用がしやすい
- 低価格でありながら、高性能
費用
初期費用:5,000円
月額費用:3,000円~
WiLL Mail

WiLL Mail(ウィルメール)は、メール配信経験の無い、初心者の方に適したメール配信システムです。専門的な知識が無くとも問題ありません。システム側の指示に従ってドラッグ&ドロップをするだけで、手軽にパソコン・スマホ双方のデバイスに対応した、HTMLメール作成が可能です。簡便性に長けていながらも、ビジュアルに富んだデザイン性溢れるHTMLメール作成ができます。
開封率やクリック率などの自動分析機能、グラフやヒートマープを用いた比較分析機能も搭載されており、しっかりと分析することも可能です。
特徴
- HTMLメールをドラッグ&ドロップで簡単に作成可能
- プライバシーマークとISMSを取得した、強固なセキュリティ
- 充実した分析機能
費用
初期費用:0円
シンプルプラン:月額4,000円~
プレミアムプラン:月額10,000円~
コンビーズメールプラス
コンビーズメールプラスは、経路探索型アルゴリズムという独自の配信システムを採用しているメール配信システムです。これにより、高速で大量のメールを一斉送信でき、スピーディーでストレスのかからない運用が可能です。
専任のコンサルタントが、貴社の最終目標を見据えたサポートや運用代行を行ってくれるため、メール配信にまったく知見がない場合でも、効果的なメール配信の運用が見込めます。
個人情報保護に関する第三者機関の認証をトリプル取得しており、近年、脆弱性が指摘されている「Log4」も利用されていません。これにより、安心できるセキュリティとなっています。
特徴
- 高速で大量配信
- 専任のコンサルタントがサポート
- 万全なセキュリティ
費用
プラン | 初期費用 | 月額費用 |
スタンダードプラン | 50,000円 | 35,000円 |
セキュリティ対策プラン | 100,000円 | 50,000円 |
カスタマイズプラン for ビギナー・カスタマイズプラン for エキスパート | 個別見積り |
まとめ
メールマーケティングの概要から実施する上でのポイントまで幅広くご紹介してきました。現在行っているマーケティング施策で成果を出すことに苦戦されている方は、低コストで始められる一方で高いROIが期待できる、メールマーケティングの実施を検討なさってはいかがでしょうか。KPIとKGIを設定し、長期的にPDCAを回していけば、自社の望む成果を得られるでしょう。