メルマガ(メールマガジン)とは、メールマーケティング手法のうちの一つです。メルマガでは、企業やWebサイトの運営者がメルマガの購読希望者に対して、自由なタイミングで一斉にメールを配信できます。
メルマガは、顧客の教育、販売、ロイヤル化といった側面で活用されます。いわばメルマガとは「顧客との関係を深くするツール」のことです。
他のマーケティング手法と比べた際のメルマガの特徴的な点は、相手側が「あなたから情報を受け取りたい」と意思表明をしている点です。
消費者の購入・申込までのステップを示した「購買ファネル」で言うと、「認知」のステージを超え、「興味・関心」のステージに分類されます。
ステージ1 | ステージ2 | ステージ3 | ステージ4 |
認知 | 興味・関心 | 比較・検討 | 購入・申込 |
スタート時点(購読開始時)が既に「興味・関心」です。配信を通して、顧客を「比較・検討」「購買」へと導けるため、事業の売り上げに大きく貢献する性質を持っています。
こういった特徴があり、多くの事業者が積極的にメルマガの活用をしています。
今回は、そういった性質を持つメルマガの全体像について基礎から解説をします。
この記事を読むことにより、次の疑問点が明確になります。
「メルマガって本当に効果がでるの?」
「自分の事業でもメルマガを取り入れるべきか」
「どういった方法を選択するのがよいのか」
ぜひ、最後までご覧ください。
メルマガの効果
メルマガが会社の売り上げに貢献する度合い
イギリスの調査会社「Econsultancy」が2019年に400社以上の企業に調査をした結果によると、メルマガが会社の売上の19%を担っていることがわかっています。なお、レポート作成者は「多くの企業がメルマガの真価をわかっていない」と嘆いています。
On average, email attracted only 13% of company marketing spend in the last year, despite
being attributed to 19% of sales.メールは企業の売上高のうち19%にも値するのにもかかわらず、企業の昨年のメールに対する支出の割合は、マーケティング支出費用全体のうち、わずか13%となっております。
引用:2019 Email Marketing Industry Census In association with Upland Adestra
メルマガは費用対効果がもっとも高い
上述した会社の調査によると、すべてのマーケティング手法のなかで、メルマガを含む「メールマーケティング」のROI(投資対効果)がもっとも高いことがわかっています。
投資対効果において、DMを「素晴らしい」と回答した会社は9%に対して、メールマーケティングはおよそ3.2倍の29%。DMの「よい」が28%に対して、メールマーケティングの割合は1.57倍の44%となっています。
出典:2019 Email Marketing Industry Census In association with Upland Adestra
メルマガ配信の目的
メルマガを配信する目的は、大きく分けて3つあります。「啓蒙・教育」「販売促進」「既存客のファン化・ロイヤル化」です。
啓蒙・教育
・目的
自社の製品・サービスにまだ興味のない見込み客に対して、まずは興味を持ってもらうこと
・配信内容の例
- 著名人/専門家のコラム・インタビュー
- 最新の業界ニュース、自社独自の情報
- 顧客の悩みや課題解決に役立つ情報
・対象
新規購読者
販売促進
・目的
行動してもらうこと、購入してもらうこと
・配信内容の例
- 割引クーポンの配布
- 体験版の告知
- キャンペーン告知
- 紹介する商品を利用したお客さまの声の紹介
- 顧客の悩みや課題解決に役立つ情報
・対象
購読者全般
既存客のファン化・ロイヤル化
・目的
LTV(顧客生涯価値)の最大化(利用継続の促進・関連商品の購入)
・配信内容の例
製品やサービスの活用アドバイス
顧客の悩みや課題解決に役立つ情報
・対象
既に自社製品やサービスを購入ないし利用している購読者
注意点
配信頻度や配信する内容はバランスが大切です。「販売促進」がもっとも購買に近いからといって、売り込みのメールばかりをしていれば、すぐにメルマガの購読を解除されてしまいます。
また、売り込み目的ではない「啓蒙・教育」であれど、毎日メール送信をしていると、同様の事態が起きてしまいます。
人には過剰なアプローチを嫌う「カリギュラ効果」という心理があります。その心理に触れないように、メルマガの頻度や内容には、気をつけて配信しましょう。
海外の調査機関が発表した調査「最適な頻度」や、日本の調査機関が発表した「好かれるメルマガ」「嫌われるメルマガ」については、下記リンクで詳しく解説をしています。より詳しく知りたい方は合わせてお読みください。
メルマガ配信のメリット・デメリット
コストを抑えられる
顧客との関係を築く同様の手段としてダイレクトメール(DM)があります。メルマガは、DMに比べてコストを抑えられます。また、機械的に同じ内容を大量送信できるため、業務の手間を格段に減らせます。
下記は、それぞれのコストを比較したものです。メルマガの費用は、配信規模や機能などケースごとに左右される節もあります。しかし、一般的にメルマガの費用の方が大幅に安くなる傾向にあります。
・DM
内訳:ハガキ代、印刷代、郵送代、手書きの一文を添えるための人件費
相場:DM:1000通 6万5,000円~8万円
※DMの種類によって費用が変動
・メルマガ
内訳:無料または、メール配信サービスに対する利用費
相場:初期費用1万円~5万円 ライセンス料0円~500万 月額2,500円~1万5,000円
・参考
メール配信システム業者の平均費用と料金相場を早見表で確認|業者比較と一括相見積りサービスのアイミツ
DM(ダイレクトメール)の費用相場を徹底解説 | 法人営業力を底上げする「BtoBHACK」
効果測定を容易にできる
メルマガでは、他のWebマーケティング手法と同様に、効果測定が容易にできます。具体的には、画像の表示回数により開封率の計測ができたり、広告のクリック回数によりクリック率の計算などができたりします。
企業・商品・サービスの認知度・好感度が上がる
メルマガは定期的に顧客にダイレクトにアプローチをできる手法です。顧客のメールの開封回数が増えるごとに、「単純接触効果」が働き、発信者・商品やサービスの認知度および好感度が上がります。
また、継続的にアプローチできるため、顧客に存在を忘れられることがなく、顧客との関係性を長期間継続させることもできます。
したがって、購読者の購読期間が長くなれば長くなるほど、販売する商品やサービスを受け入れてもらいやすくなります。それにより、展開する商品やサービスのコンバージョン(成約数・お問い合わせ数)を上げられるのです。
キャンペーン告知を即座にできる
メルマガでは、好きなタイミングですぐにキャンペーン告知をできる点も強みです。バナー広告やテキスト広告の場合は、公開する前に審査が必要であり、時間がかかります。
しかし、メルマガの場合は、審査がないため、タイミングは配信者の自由です。したがって、急きょ始まったキャンペーンに対してでも、即座に告知をできます。
メルマガ配信の注意点
ここまでよい点をたくさん述べてきましたが、メルマガには注意点もあります。それは、メルマガを開封する読者は、購読者全体の2割程度であるという点です。
具体的には、ポーランドのIT企業「GetResponse」が40億通のメールを調査したところ、アジアの平均開封率は18.51%でした。
また、アメリカのIT企業「Mailchimp」の調査によると、世界のメルマガの平均開封率は21.33%でした。
したがって、「メルマガは配信すれば短期間で成果が出るもの」ではなく、「質の高いコンテンツ、質の高い戦略において、長期間配信を続ければ、成果がでるもの」であると言えます。
こういった特徴があるため、メルマガを導入するうえでも、他の施策と同様に「どうすれば開封率を上げてもらえるのか」「どうすれば成約数を高められるのか」といった戦略を練ることや、長期間継続することが非常に重要になってきます。
知っておくべきメルマガの形式
メルマガの形式は次の3種類に分かれます。
- テキスト形式
- HTML形式
- マルチパートメール形式
それぞれの特徴について、これから解説をします。
テキスト形式のメリットとデメリット
テキスト形式のメルマガの特徴は、「文字のみで表現されるメールである」という点です。ハイパーリンクの設定は可能ですが、ビジュアル面での表現ができません。
テキスト形式のメリットは、メルマガの受信者の環境に左右されず、表示できることです。
テキスト形式のデメリットは、文字だけで表示されるため、HTML形式に比べて質素な印象を与えることであります。
実例は下記です。
出典:【困ったときはプロミス】お申込はWeb完結で郵送物ナシ!【PR】 2021/02/22 8:49 Yahoo!ダイレクトオファー より
HTML形式のメリットとデメリット
HTML形式のメルマガの特徴は次のとおりです。
- 文字の大きさの変更や、文字の修飾ができる
- 文字だけでなく、図や画像の挿入ができる
- 背景画像の設定や背景の色付けができる
- 開封率の計測ができる
HTML形式のメリットは、グラフィックにより表現力が高まり、受信者の興味をつかみやすくなることです。アメリカのミネソタ大学の研究により、グラフィックありのコンテンツは、文字情報だけのものに比べて43%もプレゼンの契約率・同意率が上がることが判明しています。
HTML形式のデメリットは、テキスト形式に比べて容量が重くなること、受信者側の環境によっては受け取れない・表示できないことであります。(メール本文が空白となる)
参考:富士通Q&A – メールのHTML形式とテキスト形式について教えてください。 – FMVサポート : 富士通パソコン
実例は次のとおりです。
出典:【困ったときはプロミス】お申込はWeb完結で郵送物ナシ!【PR】 2021/02/22 8:49 Yahoo!ダイレクトオファー より
マルチパートメール形式のメリット・デメリット
マルチパートメール形式のメルマガの特徴は、受信者がどのようなデバイスであれど、空白メールが送られず、必ず正常に送れる点です。
具体的には、「HTML形式」を受け取れない受信者に対しては、テキスト形式のみが表示され、HTML形式を受け取れる受信者に対しては、HTML形式のみが表示されます。
また、HTML形式として受信された場合は、メールの開封率を測定できます。
マルチパートメール形式のメリットは、HTMLメールが受信できない環境にもメールを届けられることです。
マルチパートメール形式のデメリットは、メール配信専用のツールを使う必要があることです。
メルマガの配信方法
メルマガを配信するうえでは、合計6つの手段があります。先に結論を言ってしまうと、小規模事業で顧客の総数が少ない場合は、無料の手段でも対応できます。しかし、本格的なメルマガ運用をするのであれば、有料のメール配信サービスの一択であります。
1.ExcelとOutlookを使う
Microsoft社が提供するExcelとOutlookを使うことにより、メルマガの配信が可能です。
メリットは、無料であることです。
デメリットは、次のとおりです。
- あくまでもExcelは数値データを扱うソフトのため、大量送信が必要な場合はメルマガには不向きである
- マクロを活用するため、ある程度ExcelおよびOutlookの知識が必要である
- 不具合時には、高度な専門的な知識が必要である
- 大量の顧客データをExcelで管理する必要があるため、管理が大変である
- ExcelとOutlookを持っていない場合は、これらの購入が必要である
・備考
✓Excel2019:¥16,284 (税込)
✓Outlook2019:¥16,284 (税込)
(2021年2月22日付のMicrosoft公式サイト価格より)
メルマガ配信マクロ実装方法については、下記の動画をご覧ください。
2.GoogleスプレッドシートとGoogleドキュメントを使う
GoogleスプレッドシートとGoogleドキュメントを使うことにより、メルマガの配信ができます。
メリットは、無料であること。また、有料版を契約の場合、メルマガ以外の便利な機能があることです。
デメリットは、次のとおりです。
- 無料版Googleアカウントの場合は、1日の送信限度数は100通までである
- 有料版アカウント(Google Workspace)の場合でも1日1,500通までである
- あくまでも「Googleグループ」の1機能であるため、メルマガ配信専用ツールに比べて、機能が限定的である
- Google Apps Script(GAS)の知識が必要である
・備考
有料版アカウントの金額:スタンダートプラン1,360円
(2021年2月22日付のGoogle公式サイトより)
設定方法については、下記の動画をご覧ください。
3.BCC配信を使う
OutlookやGmail等のBCC配信を使って、メルマガを配信することもできます。
メリットは、無料で利用可能であることです。
デメリットは、間違えてメールアドレスをCCに入れてしまうなどの人為的なミスにより、個人情報が漏えいする可能性があることです。
4.メール配信サービスを使う
メルマガ配信に特化したサービスである、メール配信サービスを使う方法があります。メール配信サービスには無料のものと有料のものがあります。それぞれの違いについて解説をします。
無料のもの
無料で提供されているメール配信サービスのメリットは、次のとおりです。
- 無料で使える
- セキュリティ機能が高性能である
- メール配信に特化しているため、取り扱いが簡単である
無料で提供されているメール配信サービスのデメリットは、次のとおりです。
- サポートの品質が低い傾向にある
- メール内に無関係の広告が表示される
- 配信件数・登録者数に制限がある
- 機能があまり充実していない
- 独自ドメインの設定が出来ない場合が多い
参考:メール配信サービスの無料と有料の違いは?メリットや特徴のまとめ | ITコラムdeパイプドビッツ|パイプドビッツ公式HP
有料のもの
有料で提供されているメール配信サービスのメリットは、次のとおりです。
- メール配信に特化しているため、取り扱いが簡単である
- 開封率を上げるために役立つ機能が豊富である
- HTMLが分からなくてもHTMLメールの配信ができる
- 無料ツールに比べて、メールの到達率が高い(エラーが起きづらい)
- 管理機能が豊富であり、セキュリティ機能が高い
- 細かな計測(到達率やクリック率、コンバージョン率)が可能である
参考:メール配信システムの機能とは。システムでできることや選び方 | ITコラムdeパイプドビッツ|パイプドビッツ公式HP
有料で提供されているメール配信サービスのデメリットは、費用がかかることです。
有料サービスの相場は次のとおりです。
初期費用 | ライセンス料 | 月額 |
1万円~5万円 | 0円~500万円 | 2,500円~1万5,000円 |
※システム買い取り型と月額契約型で費用が大幅に変わる |
その他
ここまで4種類のメルマガ配信方法について解説をしてきましたが、上記4つの方法以外にも次のような方法があります。
- 名刺管理ツールの一機能として使う
- MA(マーケティングオートメーション)ツールの一機能として使う
機能や性能は、提供している会社にも異なりますが、あくまでも「その他多数の機能があるなかでの、一機能」という位置づけです。そのため、メルマガ単体で導入するうえでは、割高になってしまいます。
既にそれらのツールを導入されている方は、積極的に活用をしていきましょう。ただし、それ以外の方は、有料のメルマガ配信ツールを活用するのが王道であり、得策であります。
メルマガは無料でも配信ができますし、これを読まれている方は「可能であれば費用をかけたくない」と思われているでしょう。
実際のところ、小規模事業での活用など、顧客の規模が小さい場合であれば、無料でも十分対応できる可能性があります。
ただし、規模が大きくなるにつれて無料ツールでは管理・機能・セキュリティの側面で対応できなくなります。
また、無料のものであれば機能に制限がありますが、有料のものは機能が豊富であり、数値の分析や顧客の心を動かすための多数の施策を実施できます。
したがって、多くの場面において、メルマガ配信を行ううえでは、有料のメルマガ配信ツールを活用するのが得策となります。
メルマガ配信の流れ
メルマガを配信する際の流れは下記であります。
- 目標設定をする
- 送信するためのメールアドレス(リスト)の獲得をする
- メール作成をする
- メール配信をする
- 効果測定をする
- 分析・改善をする
メルマガは広告と違い、配信していく過程で顧客が増えていくことはありません。
したがって、メルマガを活用するうえでは、「どのようにしてメルマガに登録してもらうのか」といった導線についての戦略を練り、メルマガへの集客をする必要があります。
メルマガ活用時の注意点
営利目的でメルマガを配信する際には、必ず特定電子メール法を遵守する必要があります。
総務省では、特定電子メールの送信の適正化等を図ることを目的として、「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」を平成20年11月に策定し、運用しています。
広告・宣伝メールを送信する場合、当該メールは原則、特定電子メール法の規制対象となります。広告・宣伝メールの送信を考えられている方は、法律違反となってしまわないためにも「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」をご覧いただき、特定電子メール法の規制内容及び望ましい広告・宣伝メールの送信方法等について理解を深めていただきますようお願いいたします。
引用元:迷惑メール対策 総務省
もしも違反した場合は懲役または罰金が課される可能性がありますので注意が必要です。特定電子メール法を遵守するために気をつけるべき項目は下記です。
- 送信者氏名 / 会社名/メールアドレス/住所の記載をする
- 購読者がいつでも受信拒否をできるようにする
(メール本文内に解除リンクの設置) - 問い合わせの受付が可能な電話番号、メールアドレスなどを記載する
- 必ずユーザーから同意を得る(オプトインをとる)
- メール受信を拒否した人へ配信をしない
- 架空のメールアドレスによるメール送信はしない
引用元:特定電子メール法 | 迷惑メール対策 | 迷惑メール相談センター
まとめ
今回はメルマガの基礎知識(全体像)について、解説をしました。
メルマガを活用することにより、顧客に対する「啓蒙・教育」「ロイヤル化」「販売促進」ができます。
それにより、顧客との関係を持続させ、会社・商品・サービスを好きになってもらえます。そして、ひいては、商品やサービスのコンバージョン数を増やせるのです。
ただし、メルマガ配信媒体の活用方法や法律など、メルマガを活用するうえでの注意点もあります。そういった点についてもしっかりと抑え、リスクのない運用を心がけていきましょう。